僕がまだ6歳くらいだった頃、望みが丘団地と言うところに住んでいた。
どういったつながりで知り合ったのか忘れたが、その近所に同い年の友達が住んでいた。
今考えると、その子は庭付きの一戸建ての家に住んでいたので、おそらく僕よりも裕福な家庭の子であったと思う。
狐っぽい色黒の顔は思い出せるが名前は出てこない。
そんな彼が家の庭でかなづちを使って何かを作っていた。
何を作っているのか尋ねてみると、木を登る道具だと言う。
2枚の板を釘で打ち付けてハサミのようなものを作りそれを使って木を登るのだという。
すごいものを作るんだなあと感心した僕はしゃがみこんで作っている様をずーっと眺めていた。
できあがったら、使わせてもらおうなんて甘い期待を抱きながらみていた。
しかし、木を登る道具は一向に出来上がらない。子供の腕の力は非力なので釘が全然板に入っていかないのである。
そうこうしているうちにその狐顔の友達は塾に行かなきゃ行けないと言って立ち去った。
そして、僕が彼の代わりにその釘を打ち付けておく事になった。
最初はなんだかトントンする音が楽しくて、作業をしている雰囲気を喜んでいた。
しかし、なかなか釘が入っていかない状況にあっという間に飽きてしまった。
作業はだんだん雑になり、釘やら板やらどこもかしこも殴りつけていた。
日が暮れてきて辺りは暗くなってきた。
帰らないといけない時間である。
ぼくはふと、もっと高いところからたたけばもっと力強く打てるのじゃないかと思い、立ち上がって思いっきりかなづちを振り上げてたたきつけた。
かなづちはバチーンと言う音がして板に当たった。
僕はもう一度振りかぶりよく狙いを定めて釘を打ち付けた。
今度はガチッと言う音がして釘が半分くらい入った。
同じようにしてもう一度釘を叩いた。
すると今度はあっさりと釘が全部板のなかに入っていった。
何だ最初からこうやっておけばよかったなどと思いながら、出来上がった木を登る道具を見てみた。
が、どうにもこうにも木を登る事に使うことはできそうにも無かった。
僕はそのガラクタとかなづちを庭に残して急いで家に帰った。
そして、その狐顔の友達とはそれからはあまり遊ばなくなった。